編集部ブログ
2020.05.15
森上逍遥先生最新刊『タオと宇宙原理』第1章その3
森上逍遥先生の最新刊『タオと宇宙原理』より、第一章「意識と科学 量子仮説」の続きをご紹介します。
第一章 意識と科学 量子仮説
神の再構築
◆「信仰」の否定と「分別」という誤り
この神観が、物理学の発展によりそのリアリティを失い、知的を自認する者たちを中心に自然科学者、生理学者、生物学者たちが〈依存〉として受け止めた神観からの脱出を試み、彼らは神信仰を捨て唯物信仰へと転換したのである。このような物事に執着して判断していく思考を仏教では「分別」と呼んで、煩悩の最たるものと教えている。凡夫の愚行として分類するのであるが、そのようなことを知る由もない知性を標榜する者たちは、新たな唯物信仰へと移り、神への信仰を捨てたのであった。その結果、それまで宗教によって保たれていた道徳や倫理観が崩壊し、権力やカネが優位の社会を形成し始め、敗者は劣者と見られるようになった。その最たる者がヒトラーであり、現在のアメリカ文明であるだろう。次は中国文明がそれに代わるのかも知れない。現在の日本も同類である。
しかし、物理学は新たな局面を提示し、いままで人類が信仰してきた「神」の概念の修正を迫ってきたのである。特にキリスト教においては人間イエスを神と概念化したことから、他の宗教とにおける絶対性にひずみが生じていた。欧米の科学者たちは、この点において特に反キリスト教の立場に立ったということでもあった。その強力な呪縛からの解放が、哲学者のニーチェやハイデガーあるいはサルトルや、ウィトゲンシュタインらによって唱えられ、宗教からの自由こそが人間存在(実存)の肯定となり、物理学者の自己同一へと向かったのだと思われるのである。(つづく)