編集部ブログ
2020.05.06
森上逍遥先生最新刊『タオと宇宙原理』序章その3
森上逍遥先生最新作『タオと宇宙原理』序章より、引き続きご紹介します。
◆量子力学は仏教哲理「非存在」を学んでいた!
いま物理の世界では、存在について無だと言い始めた。時空間は存在しないという思いもしない説が語られるようになった。それらの説はいまや定説となりつつある。しかし、時間軸の中でしか自己認識できないと信じている人たちにはそれは理解しがたい学説であろう。科学者のたわごとと感じるだろう。当然のことながら科学者の間でもそれが理解できない人は多い。
実は、仏教はその科学的真理についてすでに2500年前に、禅定という特殊な精神状態の中でその答えを導き出していた、と言ったらあなたは驚くだろうか。それは後に解説する刹那滅という定理をもって仏教哲学の基礎を成していたのである。極めて厳しい論理展開の末にこの帰結に辿り着き、仏教教義の根幹を成すに到っている。そこには、この世もこの「私」も一切が存在しない無自性(絶対性の否定)の原理によって成立していることが導かれているのだ。後に説明する如く、この仏教の哲理を学んだアインシュタインら物理学者は、仏教のこの公理をヒントにこの物理世界を分析し、遂に量子の原理について解き明かすに到ったのである。この仏教哲理に影響を受けたという厳然たる歴史的経過を改めて我々は再評価しなければならないのである。老子のタオも事物を超越し、時空をも超越して、ある種のリアリティとして存在する。それは偉大な自然科学者たちの物理法則の発見と同等に、いやそれ以上に驚嘆に値するものであった。
2500年の歳月をかけ数え切れない自然科学者たちの知恵の集積としての数式を用いた理論によって導かれたのではなく、仏陀というたった一人の直観としての深い洞察として、さらにその奥の深い体験として、それらが精神上に導き出されたという事実に敬意を払わないわけにはいかない。斯書ではそれらの事実を紐解き、人の魂が自然を前にして感受する日常言語を超越した「魂のことば」(筆者はそれを〈自然言語〉と呼ぶ。詳細は二章)に生きる人たちのために解説を加えていくものである。