編集部ブログ

2020.06.09

自己主張と「侘び(わび)」観

 日本は自己主張が下手だと言われます。自分の主張をガンガンする他国の人々に比べて、おしなべて日本人は控えめですし、他者に配慮する(気にする)といえます。個人では美徳にもなりえるこの感性は、外交など、国際舞台で他国と伍してやっていくときには、圧倒的に不利に働くことが多いです。

 この日本人の自己主張について、森上逍遥先生がその著書『侘び然び幽玄のこころ』の中で面白い指摘をしています。5月21日付の森上逍遥先生のブログでも読むことができます。

「日本人だけが他と圧倒して違うことがある。他から見ると圧倒的に劣っていることがある。それは、自己主張しないことである。この一点に於いて、日本人は他の全ての人種を圧倒している。その意識こそ『侘び』だったのである。しかもそれが弱点として作用している姿であったのだ。」

 今の若者は変わりつつあるかもしれませんが、少なくとも一定年齢以上の日本人、特に男性には、敢えて自分を主張することに対する恥ずかしさ、黙々と正しい行ないをしていれば分かる人にはわかってもらえる、という美学ともいうべきものがあるように思います。そうした日本人の心情を、「侘び(わび)」観から分析しているこの書は、出色の日本精神文化論です。

 わびさびは、日本の伝統的価値観であるだけでなく、いまの日本人の生き方をも規定していることが分かり、目からウロコでした。この他にも、「わびさび」を、現代に息づくものとして、生き生きと分析されていますので、ぜひご一読ください。

 では、「侘び観」と自己主張は矛盾するのでしょうか? どこかの国のように、誰が見ても無理のある自国利益追求型の主張ではなく、世界の人びとが平和に共生できる社会のあるべき姿を、利害を超えて主張することこそ、日本人の役割ではないか、と思うのですが…。

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