終戦後さっそく自転車を盗まれた
日本時代は、家の戸を閉めなくても泥棒に入られることはありませんでした。 戦争の始まる前、私が小さい時には、家の戸を閉め忘れて開け放しにしていても大丈夫だったものです。遅く帰って来た父が、「おっ、戸が閉まってないな」とパタンと閉めるだけでした。
時は経ち、中学一年の時のことです。その時、私の家には自転車が三台ありました。ずっと家の鍵はかけないものだったので、終戦後も私はうっかり鍵をかけずにいました。大体、戦時中の爆弾の爆風で戸がうまく合わなかったのです。そして、試験前の勉強をしている時に、お店の机にうつ伏せになってそのまま寝てしまいました。
起きてみると、三台の中で一番いい日本製の富士覇王という自転車が盗まれていました。その頃、富士覇王の自転車を買える人というのは本当に裕福な人たちでした。
盗まれてからは、ノーパンクというパンクしない自転車で通学しなければならなくなりました。この自転車はその名の通りタイヤに空気が入っていないので、相当力を入れてこがないといけません。でこぼこ道ではガタンゴトンガタンゴトンとなり、乗り心地があまり良くありませんでした。