同級生との苦い再開
台北一中の同級生で、高等商業に進学した内地人がいました。向こうは高等商業を三年で卒業して、予備幹部で台北の山砲隊の少尉、小隊長になっていました。
私が大学二年の時、その同級生と偶然再会したのです。私は、連合演習(学生と軍隊の合同練習)という野外演習をしていました。大学生も鉄砲を担いで連合演習をさせられたのです。見ると、その同窓生が、現役の少尉として立派に一小隊の山砲を引き連れて一緒に演習に来ているではありませんか。行軍している途中で、懐かしく、思わず「おいおい、○○君」と声をかけました。向こうはバリバリの軍服を着た勇ましい軍人です。ああ、いいなあと思って見ていたのです。すると、彼はつかつかと寄って来て、ピシャッと私のほっぺたを一つ殴ったのです。何のために殴ったのか、分かりませんでした。
後で考えてみると、自分は戦場でいつ死ぬか分からないけれど、お前は台湾人だから兵隊にもならなくていい(台湾人に対しては、終戦間際まで徴兵制度がありませんでした)、のうのうと医学部で勉強していることが癪に障ったのでしょう。そう解釈する以外、自分を慰める術がありませんでした。哀しい思い出です。
その人は、まだ存命です。台北一中の同窓会で何回も台湾に招待していますが、まだ一回も見えていません。恐らく当時の思い出が苦く残っているのではないでしょうか。そういう時代だったとしか言いようがありません。