シリーズ「日本人の誇り」刊行によせて

国がどこへ行こうとしているのかが見えないのは哀しいものです。

私たちがどこへ向かえばいいのかが分からないのは不安なものです。

日本と日本人の将来を考えた時、少なからず暗澹たる思いに駆られるのは、この日本国というシステムの何かが間違っているからではないでしょうか。その何かの根幹と思われる日本人の精神形成を探るのが、本シリーズ「日本人の誇り」の刊行目的です。

大東亜戦争敗戦後、確かに日本は奇跡的経済発展を遂げ、現在、大半の日本人が豊かな生活を享受しています。この日本の経済的な豊かさは、他国民からも羨望の的となっています。

しかし、日本が諸外国から国家として、民族として一目置かれているかというと、果たしてどうでしょうか。むしろ、中国や韓国に対しては卑屈な謝罪外交が当然の如くに罷り通っており、他国の失笑を買っているのが現状です。また祖国のために命を擲って戦ってくれた父や祖父たちを祀る靖國神社に、首相が参拝することさえ儘なりません。まるで主権国家とは言い難い国へと堕してしまっているのが、認め難くも認めざるを得ない現在の日本なのです。

この元凶と考えられるのが、戦後の日教組による歪んだ教育と、朝日新聞に代表されるマスコミによる左翼思想的偏向報道です。左翼主義者たちは、日本人は植民地で酷いことをした、戦時中数々の戦争以上の残虐な事を行ったなどといった捏造された自虐史観(東京裁判史観)をあたかも真実かのように、戦後六十年間声高に喧伝してきました。嘘で塗り固められた″南京虐殺″は正にその典型と言えるでしょう。

しかし、事実は彼らの言う事とは全く違っています。アジアを植民地とした西欧列強が搾取と略奪を恣にしたのに対し、日本は台湾、朝鮮に於いて本国よりも進んだインフラを整備し、高度な教育を施し、「公」の意識と遵法精神を涵養したのです。これは、正に日本のみが成し得た誇るべき偉業です。

そもそも、日本がアジアの国々に進出したのは、植民地化のためなどではなく、自国防衛のための地政学的理由に因るものでした。更には、アジアの民の防衛であったのです。勿論、そこには多少の野心もありました。しかし、その野心よりも自国防衛、大東亜共栄圏の確保の意識の方が、遥かに強く大きかったことを誤認してはなりません。いみじくもその結果として、欧米列強が日本一国によって駆逐され自国に引き下がったのは、歴史の明示するところです。その結果、アジアで三十三カ国、アフリカで四十九カ国が独立するという奇跡が起こったのでした。

日本の行いの全てを美化することは間違いです。しかしながら、現在、不当に歪曲されてしまっている歴史の事実を客観的に捉え直すことこそが、本シリーズ刊行の意図です。

一四八九年のバスコ・ダ・ガマのインド上陸以来続いてきた欧州によるアジア支配は、十九世紀には、米国も加わって熾烈を極め始めていました。そして欧米列強による日本の植民地化は時間の問題でした。

そこで時の維新の志士たちは、祖国を侵略されないための政策として、日本国を創り変え、富国強兵という近代国家政策を決定したのでした。彼の福沢諭吉も、当初は中国・朝鮮の自力更生を支持し、辛抱強くその時を待ち続けたのですが、不幸にして朝鮮・中国からその声は聞かれず、その行動は見られず、遂に福沢翁をして、中国、朝鮮の無能ぶりに落胆、地政学的に侵攻せざるを得ないと言わしめたのでした。

この歴史的事実を無視して、日本国を侵略国家などと言うのは真に不遜、無知、不当の極みであって、恥ずべきことと言わねばなりません。その結果として、台湾、朝鮮半島、満州に於いて、日本との同化が行われました。台北に到っては大金が投じられ、東京よりもモダンとなるほどに近代都市化されたほどでした。これなどは正に西欧列強が行った植民地化とは全くの対極に位置する、極めて公正な政策であり、歴史上未曾有と言えるほどでした。

それ故に、当時の台湾人たちは、今も当時の日本を祖国と思うほどに到ったのです。残念なのは、その後、蒋介石率いる国民党軍が正に侵略の民として台湾を陵辱し、その火器をもって民衆の自由を奪い、思想弾圧をし、捏造教育をし続けたことでした。台湾の歴史にとって真に暗黒と呼ばざるを得ない時代でした。幸か不幸か、台湾人に対して国民党が行った武力弾圧によって、台湾人の間に中国人に対する反発心が生じ、同時に祖国・日本に対する思いが一層募ったのでした。それ故、現在も猶、李登輝前総統に代表されるように日本語で思考し、日本をこよなく愛する人たちが存在するのです。それは取りも直さず、日本が台湾政策に於いて、公明正大を旨として、教育をその大地として、台湾人の知的レベルアップ、原住民の治安維持に貢献したことを意味するのです。

それは、朝鮮半島政策に於いても同様でした。ところが、韓国に於いては、終戦後、徹底した反日体制が米国政府によって敷かれ、反日政府によって徹底的に日本に対する敵愾心を募らせる教育が行われたのでした。共産化した北朝鮮も同様でした。どちらにせよ、当時の民族主義者たちが、我が意を得たりとばかりに日本国によって敷かれた近代国家への布石を全否定する形で、自国民の優位性、そして日本人の性悪性を、戦後六十年間に亘って捏造教育し洗脳し続けたのでした。それは、現在も続いています。これでは、どんな人種も日本が嫌いになります。

台湾の場合と違い、同じ民族による軍事統制であったために、台湾で行われたような二・二八事件に代表される政府による民族の大虐殺といったものは生じなかったし、対立構造が生まれにくい状況にあったことが災いし、日本の統治は悪くなかったと思っていた大半の人たちも、政府及び民族主義者たちによる暴力的弾圧を恐れて口ごもることでいずれ落ち着くところに落ち着くと、その時を過ごしたのでした。ところが、それが大きな誤算だったと気付くのにそれほどの時間は要しませんでした。

その後、一度たりとも多数派の親日派の意見は表に出されることはなく、日本によって行われた数々の近代化政策は、一つとして評価されないどころか、そのようなこと自体がなかったと捏造されるに到ったのです。それは新しく政権を握った者たちの野心の結果でもありました。何にも増して、米国の日本囲い込み政策が、その裏にはあったのです。

その結果、今や韓国人の九九%が日本人憎しに変わってしまったのです。何と愚かで哀れな話でしょうか。

いみじくも戦後、軍事クーデターで政権を奪取し第五代大統領となった朴正*が語っているように、日本統治になって初めて全国民が教育を受けられるようになり、インフラが整備され、明らかに前国家より良くなったのでした。

日本を悪者にするという政策の結果、米国は民主主義や自由主義を旗印にせざるを得なくなり、それまでの植民地政策を大転換する結果となったのは、日本にとっては皮肉なものでしたが、世界にとっては良いことでした。それは、そうすることに於いてのみ、米国や欧州がアジアやアフリカで受け入れられるということを悟ったからに他なりません。愚かだったのは、その欧米の変わり身の早さ、手前勝手な二枚舌の論理にまんまと乗せられたアジアの民でした。

欧米人が世界を支配し、自分たちに都合の良い基軸を世界基準とし続けているこの時代にあって、アジアの民同士が対立するのは、愚か以外の何物でもありません。世界を見るとよく分かります。この地球を支配しているのは、人類というよりは、特定の白色人種であるという事実を謙虚に認識する必要があります。欧州や北米、オーストラリア等に行けば、すぐに理解出来ることですが、彼らは常に、我々アジア人を見下しています。たとえリベラルな人たちと雖も、或いはヒューマニストと呼ばれる人たちであっても、彼らの意識は常に自分たちが上位者で、アジア人種やアフリカ人種は下位者であるという意識に基づいて援助をし、友人関係を結ぶのです。実は彼ら自身が、自分の心奥に巣喰うこの差別し見下す意識の存在に気付こうとしていないのです。

アジアの民は、争っている場合ではありません。我々はこの地球の征服者と言ってよい白人国家に対応すべく、黄人国家間の精神的つながり、経済的つながり、政治的関係性をより深め、共通する価値観の下に欧米の文明文化とは異質の文明文化を築かなければならないのです。

そうすることによって初めて、欧米はアジアに対し心の伴った敬意を払うようになります。現在、我々アジア人が欧米人に持っている憧れや尊敬や劣等感と同じものを彼らがアジア人に対して持つようになることが、非常に重要な一大事であるのです。お互いが尊敬し合い、憧れ、ともに優劣を競ってこそ、良き関係と言えるのです。

その関係を実現させるためには、まずは日本、台湾、中国、朝鮮、更にはタイ、ミャンマー、インドシナ三国、モンゴル、チベット、ブータン、ネパール、スリランカという仏教国、或いは極東四民族に於ける儒教文化圏というものが、同じ価値観の上に確立される必要があります。その時初めて、人類史の近現代を支配するヨーロッパ人種に敬愛されるアジア人種へと成り得るのです。

ここに於いて人類は新たな局面を迎え、本来、人類が求めていたはずの自然回帰、真理追究、人間讃歌、平和や愛といったことを可能ならしむるのです。その出来得るだけ近い未来を夢見てこのシリーズを刊行するに到りました。

志ある方々が、小社の思いに御賛同下さり、御興味を少しでも持って下さるならば幸甚の極みです。諸先輩方の御指導御鞭撻のほどを切に願う次第です。

また、これを機に日本時代の美風を残す台湾との絆をより一層強められれば望外の喜びです。

最後にタイのククリット・プラモード元首相が、一九五五年に元タイ駐屯軍司令官であった中村明人氏に語った言葉を紹介し擱筆します。

「日本のお陰でアジア諸国は全て独立した。日本というお母さんは難産して母体を損なった。しかし、生まれた子はすくすく育っている。今日、東南アジア諸国民がアメリカやイギリスと対等に話ができるのは一体誰のお陰であるか。それは身を殺して仁を成した日本というお母さんがあったためである。十二月八日は我々にこの重大な思想を示してくれたお母さんが、一身を賭して重大決心された日である。更に八月十五日は、我々の大切なお母さんが、病の床に伏した日である。我々はこの二つの日を忘れてはならない」

平成十五年十一月九日

(巻末「シリーズ刊行にあたって」より)

「日本人は、日本人であることを大いに誇っていいのです。昔の日本精神はどこにいったのですか! 私はそう叫びたいです。しっかりして欲しいのです」 終戦まで日本人として生きた台湾人著者からのメッセージ!

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