皇民化教育と先生

大東亜戦争については、自衛のための聖戦と聞かされていました。そして、大東亜共栄圏を建設するのだ、と。もちろん、その時は、言われたまま理解していました。

高等学校や大学の先生方は、戦争に関しては、それ以上のことは言いませんでした。やれ非国民だとか、そういうことも言いません。大学や高等学校の先生は、自由主義の人間が多いですから、口では言えないけれども、学問の自由とかいうことを第一に考えて、戦争には、どちらかというと反対の立場だったのでしょう。

私の考えでは、台湾で生まれ育って、台湾で教育を受けた日本内地の人は、概して台湾人を馬鹿にします。特に、一中に入ったり高等学校に入ったりする人は、たいてい官吏の息子か大きい商売人の息子です。父親がそういう目で台湾人を見ているから、息子もそういう目で見るようになるのです、

逆に、塩幡先生のように、日本内地から赴任して来て、台湾について何も知識のない人間は、差別がありません。後になってから、台湾人が一段下に見られているという社会の構造に、だんだん気がつくのです。

これは、後になって私が感じたことです。当時は、何も分かりませんでした。どうして差別されるのか、分かりませんでした。

面白いことに、差別した人ほど、今度は逆に台湾を懐かしがるのです、終戦後、二つの国になったら、「懐かしいな。昔はどうもすまなかった」と言うのです。

もう皆、年をとりましたから、昔のことは、水に流してしまっています。私はよく言うのです。「私の所は、島国で小さい国だけど、大国民の風土ですから」という具合に。


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