誤解から始まった暴力の歴史

初期のキリスト教徒というのはユダヤ人だったのですが、キャロルの本によると、彼らにおいても、『キリスト教の啓典』の中に書かれた自分達の兄弟で、同胞のユダヤ人についての記述のいくつかを、きちんと理解していなかったということです。

例えば、あなたが自分の兄弟に向かって「この頑固な鈍牛め」と言ったとしましょう。だからと言って、あなたがいつもそう思っていて、彼のことを牛のように扱っているということではありません。そうではなくて、たとえ兄弟でもそのように思う時があるということです。

そして後の時代の人々は、初期のキリスト教の人々の言動を誤って理解していったのです。

また、当時の巨大な征服者であったローマは、自分達が支配している人々が反乱を起こさないように、彼らをてなずけ、支配された民族同士、または、一つの民族の中の一集団を敵として、互いに争わせていたということです。

キャロルの主張の一つは、ある誤解が次々と新たな誤解を生み出し、それらが積み重なって、一つの教えを導き出し、遂にはキリスト教徒のユダヤ人に対する大きな暴力となり、その究極がホロコーストであったということです。

キリスト教徒は、彼らの教えの中に何か誤ったものに導くものがあるのか、あるいは、彼らが教えを正しく理解していないために暴力に向かうのかを考えるべきでしょう。

キリスト教の指導者は愛と憐れみを説き、「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」と教えているのにも拘わらず、キリスト教の歴史には多くの暴力がありました。このことは、その教えが伝えられる過程において、何かが間違っていたことを示しています。


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