本を愛する皆様へ
本は、豊かな心を育み、知性を磨き、人を成長させてくれます。「本の文化」は、人類が失ってはならない非常に大切なものの一つです。
時代とともに出版のあり方が変わるのは当然ですが、これからも良い本が世に出続けるために、守らなければならないものがあります。それは、著者の権利と出版社の権利です。それはひいては読者の権利を守ることにもつながります。これらがいま、大きく棄損されています。
皆様が本を購入されると、そのうちの何%かが、「印税」という形で著者の収入になります。古本を買った場合は、その「印税」は一切発生せず、著者の収入になりません。また、その本を作っている出版社にもお金が入りません。もしも、お好きな著者を応援しようと思われるなら、或いは、その出版社が今後も本を出せるように応援しようと思われるなら、ぜひ古本ではなく、「新本」を購入してください。
読み終わった本を処分される場合も、もったいなく抵抗がある方も少なくないでしょうが、ブックオフをはじめとする本の転売業者や古本屋などに売らず、資源ごみに出しましょう。それは、リサイクルされ再生紙に生まれ変わります。
転売業者の中には、希少本などを買い占めて不当に高く売る業者もいますが、こういう業者にどうぞ協力しないでください。
本は単なる商品ではなく、社会共通の財産です。欲しい人の手に正当な価格で渡り、著者や出版社が守られることがなければ、豊かな本の文化は守れません。
古書店には、絶版になった本が買えるという大きな魅力と役割があります。まだ書店で買える本は書店で、買えなくなった本は古本屋で、ぜひご購入ください。
抜本的な解決として、古本にも印税が発生するように、業界全体で働きかけていく必要があります。音楽業界では、カラオケで歌われても印税が発生していることを考えると、出版業界ではこれまで正当に権利が守られてこなかったと言えます。
出版業界の衰退が言われるようになって久しいです。
20年ほど前、2万店以上あった書店は、今や半減、町から書店がどんどんなくなっています。本の売上も、この20年で大きく落ち込んでいます。新たな本が作られなくなれば、印刷所や製本所など、本の制作に携わる業者も打撃を受け、ますます本が世に出にくくなります。
本は、新たな世界への扉を開き、著者の世界観との出逢いや、新たな知識、多くの学び、感動、発見、生きる希望や勇気…と、本当に多くのものを与えてくれます。書店を歩くこと、本を選ぶことにも、感動や出逢いがあります。
こうした豊かな「本の文化」をこれからも大切に育てていけるように、そして、出版業界を立て直していけるように、どうぞ皆様のご協力をお願い致します。
出版社や書店の皆様、取次の方々、印刷会社や製本所、本の装丁やデザインなどに関わる皆様、ぜひこのことを共に発信し、本の文化を守って参りましょう。
桜の花出版 社長 成田玲子